蛍火艶夜【うす消し特装版】
案内人:凪(すれ違い・幼なじみの棚)
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「蛍火艶夜」。声に出すと、それだけで夜のしっとりした空気が立ちのぼってくるような題だ。蛍のはかない光、艶めいた夜気。言葉の選び方からして、激しい展開で押すより、暗がりの静けさで読ませるタイプの単行本だと読み取れる。
こういう和の情緒を冠した作品は、出来事よりも「間」で語ることが多いと思う。沈黙、視線、夜の湿度。そういう直接的でないものの積み重ねで、二人の距離がいつのまにか変わっている——その手触りに重心がありそうだ。すれ違い・幼なじみの棚にあることからも、ずっと近くにいた関係が、ある夜ふっと違う色を帯びる瞬間を、急がず丁寧に描くのではと想像している。蛍火が一瞬だけ強く灯るような、静かな高まり。
向くのは、和の情緒や夜の薄暗い情感を味わいたい人、説明よりも空気で読ませる筆致を好む人。逆に、テンポよく進む展開や明快なドラマを求めると、ゆったりした運びがもどかしく感じられるかもしれない。【うす消し特装版】の表記どおり、修正の控えめな版である点も特徴のひとつ。雰囲気に身を浸せるかどうかで、評価がはっきり分かれる一作だと思う。静かな夜が好きな人に、そっと薦めたい。
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