しのだ、の(単話)
案内人:朱音(大人の恋愛小説の棚)
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「しのだ、の」。この読点ひとつが、もう作品そのものだと思う。呼びかけのようで、つぶやきのようで、言い切れずに途切れる。誰かの名前を口にすることそのものが事件になる、そういう繊細な物語の気配がここにある。
言いさしのタイトルが示すのは、口に出すまでの間と、飲み込んでしまう言葉の重さだろう。名前を呼んで、そのあとに続くはずだった一言を喉の奥にしまう——そんな小さな所作の積み重ねで、ふたりの距離が静かに動いていくタイプだと感じた。単話だから、その張りつめた空気にすぐ触れられる。台詞よりも沈黙のほうが多くを語る作品に、私はどうしても弱い。
向いている人:静かで余韻の残る関係性を味わいたい人。言葉にならない感情の機微を丁寧に追いたい人。
少し注意:派手な展開や明快な刺激を求めると、おとなしく映るかもしれない。単話なので物語の輪郭は限定的。雰囲気に身を委ねる読み方が合う。
読点の向こうに続くはずの言葉を、想像しながら読むのがいい。静けさを愛する人へ。
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